軽油税脱税事件と行政の対応



 軽 油 税 脱 税 事 件 と 行 政 の 対 応
 
    地方税である軽油引取税(32円10銭/リットル)の脱税がいま大きな話題となっているが、軽油引取税の脱税対策に関しては、ここ2年余りの間に何度かの重要な転機を迎えている。

 輸入粗油(関税定率法上は軽油ではなく、地方税法上は軽油に分類される石油製品)による軽油引取税の巨額脱税事件発覚がきっかけとなって地方税法が改正されたのが一昨年4月。その後急速に沈静化した輸入粗油による脱税に代わり、一昨年後半から各地で数十億円単位の実例が相次いで発覚した。これが、不納入事案と呼ばれるケースだ。

 不納入事案は当初、納税すべき額は正確に申告するものの実際には納税しないという、一般的な脱税とは異なるその手口ゆえに、犯罪として立証しにくく罰則を課すことは難しいと見られていた。しかし、昨年7月と11月に東京都が、不納入事案に対する対応としては異例ともいえる刑事告発を前提とした強制調査に踏み切ったことで局面は一変。不納入事案にも法のメスが入れられる可能性が高まっている。さらに地方税法の一部が改正され、輸入軽油に対する規制が強化されることも、不納入事案に対する強力な歯止めとなりそうだ。

 しかし、ある税務当局関係者が「不納入事案を抑えても、また別の手口が出てくるだけ」と指摘した通り、不納入事案に対する規制強化と時を同じくして、かつての主役だった混和軽油(軽油にA重油等を混ぜ軽油として販売する)による脱税が、再び拡大する気配を見せている。暴力団の資金源とのうわさもあり、手口もより大掛かりに、より悪質になっていると指摘する声は強い。

 まさに“いたちごっこ”の世界だが、行政側も負けてはいない。特に東京都は、石原知事が力を入れる環境問題とも関連して、混和軽油に対する規制を一気に強化する構えを見せている。都の公害防止条例を30年ぶりに改正し、「自動車Gメン」を新たに設置して混和軽油の摘発に乗り出したほか、「不正軽油撲滅作戦」を打ち出して不正軽油の徹底排除を広くアピールしている。

 脱税軽油に対する包囲網は急速に狭められつつある。「輸入粗油」、「不納入事案」そして「混和軽油」と続いた大掛かりな軽油脱税の最後の砦が、これで陥落するのかどうか。それとも、また新たな手口が登場するのか。延々と繰り広げられてきた税務当局と脱税グループの激しい攻防はいま、大きな山場を迎えている。