2006年02月  「最高益の正体=在庫益リットル3円弱」、「スタッフの確保は「量も質も」」



 最高益の正体=在庫益リットル3円弱
 
    12月期の昭和シェルが決算を発表し、2期連続最高益という好調な数字が踊った。3月期決算元売も最高益更新を見通している。わずか3期前までは奈落の底にあった元売業況を熟知する給油所から見て、その復活は、お見事と高く評価したいが、やはり素直に喜べないのが正直な気持ちである。
 同じ石油を業としながら、原油所経営の視線でも、不満をぶつけたくなる精神状態となっている。原油高が完全な出費増となる需要家や一般家庭の視線は、儲けすぎ批判という誤解の大合唱となって、給油所店頭へ跳ね返る可能性が強くなりそうである。そして儲けの大部分が、さらに小売りの競争激化につながる給油所分野へ偏って再投資される危険性が高まりそうだ。この2点が気にかかる。
 最高益の誤解を、新日石の例で解説すると以下のようになる。新日石の今期経常利益は2期連続で最高益を更新する3,000億円の見通しとなっている。このうち1,550億円が在庫評価益であり、今期の内需販売数量は5,860万キロリットルを見込んでいる。リットル換算では、わずか2.65円に過ぎない。
 2.65円/リットルとは、為替が1ドル120円とすると、3.5ドル/バレルの変動に相当するものだから、同社の今期の原油相場の前提である53.7ドル/バレルが、50ドルに下落することで、そのすべてが無に帰す数字である。
 現実に新日石が今回の見通しを発表した今月3日のWTI原油は65ドル/バレル台であったが、先週には57ドル台へ急落している。原油の在庫益が、来期には在庫損となることだってある。在庫損が生じた場合の製品価格への転嫁がままならない場合は、収益的に大きな反作用となる。
 ここまでの理屈はわかるが、では一旦、課税されて配当を油高の恩恵を受けない給差し引かれた今期利益は、どこへ蓄えられるのか。その回答は元売の資産へ計上され、期末をもって流動性資産へ組み込まれて1株当たりの純資産を良化する。結果的に企業価値の向上につながる。やはり利益は利益なのであるから、特に家庭の主婦をイメージするような懇切丁寧な情報提供が必要となる。
 店頭で「儲かっているのなら安くして」という要求が出ることを給油所経営者は危惧している。精製と一次卸が潤っているように見えて、給油所が儲かっていない、という本当の姿が、実は最も消費者には理解されにくい部分であるのだから。(2月21日付)




 
 スタッフの確保は「量も質も」
 
    メーカーは「今年を『量から質への転換』の総仕上げの年」(渡文明石油連盟会長)と位置づけているが、給油所現場では、「スタッフの『量と質』の確保」が大きな課題となっている。有効求人倍率が久方ぶりに「1」となり、長く続いたバブル崩壊後の不況から脱しつつあるようだが、中小企業にその実感は乏しく、石油販売業界には逆に、求人倍率の上昇に歩調を合わせるように「人材確保が極端に困難になっている」との声が多くなっている。
 給油所が成功するかどうかのポイントはいくつかある。例えば、立地であり、施設だが、これらの所与の条件を生かすのはスタッフのサービス力であり、モラルだ。ところが、給油所そのものの減少、セルフの拡大によって正社員のリストラが進められた結果、優秀な人材の流失が発生した。また、地域のパートをほとんど根こそぎ奪っていくショッピングセンターや「ニート」の増大などによって、給油所が受け入れていたパート・アルバイト層も小さくなっている。「給油所の時給より安くても、店内勤務のファストフードに人気がある」「アルバイトに洗車をやらせたら、次の日から出てこなくなった」という話も多い。
 「3K職場」として学卒者が極端に採用しにくくなり、多くの石油組合が雇用改善のために人材確保事業に取り組んだバブル以前の平成初期の時代が再び到来したようだ。
 人材確保のための取り組みはすでに始まっている。例えば奈良県石油組合は無料人材紹介事業を定款に盛り込む等、具体的な動きを見せ、埼玉県石油組合は県のシルバー世代活用事業と提携、県内数ヵ所で説明会を開催するなどしている。また、経済産業局の中でもこの種の事業を進めているケースがある。
 スタッフの能力開発のため、九州のほぼ全組合が開設したカーライフアドバイザー研修制度がある。この事業は、元売が「放棄」したスタッフ教育を組織が代替すると同時に、スタッフを系列の枠や個別企業の枠をも越えて、販売業界全体の人材とする試みと受け止められている。アドバイザー事業はさらに拡大の傾向を見せ、石油組合の「定番事業」に成長している。
 資源エネルギー庁と石油協会が「給油所版ハローワーク事業」の検討に着手したのは、セルフとは異なり、「人(人材)」が運営する給油所の存在意義に注目したからだ。「人」を大切する業界は強い。(2月7日付)