2010年12月


 

上原明大教授「ブランド料」講演・業転横流しではブランド料訴求は困難
 
 

 全石連経営部会(中村彰一郎部会長)は先ごろ開いた第4回経営政策検討ワーキンググループ(WG)に石油協会理事で、産業構造審議会流通部会長を務める明治大学専門大学院グローバル・ビジネス研究科の上原征彦教授を招き、『ブランド使用料とプロモーション費用』と題する講演を聞いた。上原教授の専門分野は流通論・マーケティング戦略論。講演では「石油製品は明らかにブランド力の訴求が難しい製品に位置付けられる。こうした傾向のもとではブランド使用料を払う根拠が希薄になりつつある」、「系列はブランドを基軸とした組織体ではなく、プロモーション共同体となっていくのではないか」などと述べた。以下は講演要旨。

 取引にかかわる条件の設定は、契約に基づくのが原則である。今回のような問題をどのような契約条項で処理するかが決められていれば、それによって処理することになるが、ただ、流通論や商取引の原則論からみて矛盾点・問題点を指摘できる場合は、契約そのものに立ち返って見直すことも必要だ。石油業界の契約については、たとえば正統的なフランチャイズビジネス(FC)の契約と比べ、厳密な論理と時代適応性に欠けるところがあり、これが今回の問題を生じさせている一因となっている。
 “ブランド”は、消費者の長期記憶に入っているもので、これが購買時に引き出されて、当該商品の購入に強く作用することが期待されている。この作用の強さをブランド力と呼ぶことができる。長期記憶に入れるためには広告などが有効であるが、そこから引き出すためには、たとえば小売店舗での商品陳列の仕方なども大きな効果をもつ。花王など優秀なメーカーは、自社製品のブランド力を訴求するため、消費者の長期記憶に入れるための広告などを自前で積極的に展開するほか、それを引き出すための商品陳列にも自己負担で金をかけ、小売店を支援している。それは、自社のブランド力を高めたいからであり、そのブランド力を自社が享受できるという考え方に基づいているといえる。
 ブランドには大きく2つの効果が期待されている。1つは、名前の役割をもち、個体の認識を容易にする効果である。いわゆる固有名詞としてのブランドである。いま1つは、そのブランドによって差別性・優位性を高める効果であり、これをブランド・プレミアムと呼ぶ。このプレミアムが高いブランドとそうでないブランドがある。プレミアムが全くなく固有名詞だけの効果しかもたないブランドも多い。
 プレミアムが高いブランドについては、これを取り扱うと恩恵があるため、その使用料を支払う根拠がある。しかしプレミアムの低いブランドにつては使用料を支払う根拠は希薄だといえる。
 ブランド力が強い(ブランド・プレミアムが高い)と、販売店は製品を高く売っても需要はそれほど落ちない。そして少しでも価格を下げると大きく売上げが伸びる。逆にブランド力が弱い製品は値下げしても、それほど需要が増えず、値上げすると大きく需要が落ちる。プロモーション費用さえその価格では吸収できなくなる。石油業界の価格競争が激化し、PBSSと系列SSに格差がついていくのは、石油製品が明らかにブランド力の弱い曲線(グラフ参照)に位置付けられるようになったからである。
 こうした傾向のもとではブランド使用料を払う根拠が希薄になりつつある。元売もブランド料というのではなく別な形に変えてくると思う。また、過剰生産に陥りやすい性格を有し、余剰製品をいわゆる業転として横流ししている業界構造では、ブランド・プレミアムそのものを訴求するのは困難である。このような構造では、価格競争がますます推進され、ブランドによる差別性の訴求はほとんど不可能になってきている。
 一方、ブランド使用料とプロモーション費用とは深く関連づけられる。プロモーションは①広告②パブリシティ③人的販売④セールスプロモーションの4つに分けられる。①広告と②パブリシティは「非購入時点の態度形成」に寄与するものだが、これは店舗外でメーカーが自分の製品をPRするために行っているものであり、販売業者がこの費用を負担する根拠は薄い。③人的販売④セールスプロモーションについては、購入時点において店舗で行われるため、元売と販売業者の双方に利するので、両者で負担すべきものが混在している。店舗で元売が行うプロモーションのうち、販売業者の拡販に有意な効果があると思われるものについては、販売業者が負担する必要がある。
 このようにプロモーションは単なる拡販のためだけでなく、ブランド力の構築・維持のために行うものであることを考えると、元売がプロモーションをしながら業転を系列外チャネルに流しているという事態は、明らかにブランド力の構築・維持のためのプロモーション効果を減じていることになる。なお、品質保証・安定供給は、系列においては売買契約の必要条件となるので、このための料金を徴収することは合理性に欠ける。
 以上のことはメーカー主導型系列チャネルの基盤そのものが崩壊過程にあることを示唆している。将来は、販売業者が集まってチェーンを構成して、メーカーへの拮抗力を発揮する機会も拡大してくるかもしれない。
 また、販売関連コストという名称になったならば、そのコストの根拠を示さなければならず、そこに固定費的なものがあるとするならば、㍑換算して仕入価格に加算するのはよくない。仕入価格とは別に、1SS当たりにかかわるコストを計算してこれを提示するべきだろう。上記の販売関連コストを系列店の仕入価格に上乗せすると、根拠が明確でない限り、差別対価として判断される恐れもある。
 石油はコモデティ化してきており、系列は明らかに緩む方向にある。当面は、系列はブランドを基軸とした組織体ではなく、プロモーション共同体となっていくとみたほうが現実的だ。