2011年1月


 

石油協会・信用保証「事故」分析 ~「転ばぬ先の杖」のために~
 
 

 全国石油協会(持田勲会長)の実施する信用保証事業において、事業創設以来の事故(企業倒産等)分析によると、事故に至る典型事例として「売り上げ不振」を端緒として、大きく6分類の要因があることが判明した。「ぜんせき」では、事故の恐れのある「シグナル」、その「シグナル」が出た際の「善後策」などについて連載。

 


〈1〉売上不振の次にやってくる「危険シグナル」と「対処法」
 価格変動が激しい原油をベースとする石油製品の販売を主事業とする石油販売業者。その主取扱商品のガソリンについては高率のガソリン税が課せられ、取引金額が大きく、仕入先に対する取引担保の提供や仕入代金の支払いと販売代金回収までの期間に要する運転資金の負担も大きく、金融機関からの借入れに伴う金利負担や担保提供の負担も大きくなる。さらには、石油製品が危険物であることから、販売施設(SS等)の設置・維持・管理および環境対策などに、多額の経営資金を要する。
 こうした特殊な事情にある小規模石油販売業者の資金需要に応えるための部分保証をベースとした小口個別事業用運転資金制度。それが石油協会の「信用保証事業」で、2005年度からは対象資金の拡大、09年度からは保証条件の緩和などを行い、利用者にとってより使いやすい制度となるよう改正を施している。また、原油高騰等による緊急支援保証制度としてセーフティネット資金、離島・過疎地共同事業資金、環境対応促進資金を創設し、今日に至っている。
 その事故例について、1978~2010年度(9月まで)の33年間の累計1,218件(金額135億5,100万円)の原因を分析した結果が別表で、「売上減少」に分類できるものが、ほぼ4分の3に相当する880件(103億7,700万円)に達することがわかった。件数では以下、大きく離れて「連鎖倒産」、「放漫経営」、「事業失敗」と続く。
 年度別では特定石油製品輸入暫定措置法が廃止され、自由化の起点となった1998~2003年度に大きな山があり、2008年度~今日が第2波となる山を形成している。

〈2〉リスク高い「他者依存」 放漫経営の典型「改めない生活水準」
  ~SS経営判断に起因する事例~
 事故分析による6類型で圧倒的に最多を占める「売上減少」。過当競争による売り上げ不振を主たる要因とするもので、全体の72.3%を占める。ほとんどが粗利の低下による赤字経営が続き、やがて資金繰り破綻に至るといった事例。これ以外の27.7%について、経営判断による「兼業失敗」、「放漫経営」、「過剰設備」、経営判断によるものではない「連鎖倒産・不良債権」、「病気・死亡」の5類型があり、まずSS経営判断に起因する3類型、合計161件(15億5,200万円)について、事故例を見てみる。
   ◆   ◆
 「兼業失敗」は33年間で60件(7億800万円)の事故がある。
 (事例①)飲食業・旅館業を営むも、もともと経営ノウハウがなく他人任せの新規事業への進出~業績低迷で2006年6月より延滞が発生、9月から条件変更で対応し、1年延命したが、07年9月に期限の利益喪失(※)。
 (事例②)分譲住宅販売を兼業しており、手元流動性資金の大半を不動産業へ回していたが、不動産価格の下落に伴い、資金繰りが悪化、03年9月に不渡り、10月に期限の利益喪失。
 ―安易な事業展開が本業を圧迫した事例が多い。新たな事業展開は、経営者が先頭に立って軌道に乗せるべきで、他者への依存した経営やデベロッパーの言いなりとなった不動産事業は成功率が低い。
   ◆   ◆
 「放漫経営」は75件(6億3,200万円)の事故がある。
 (事例①)韓国からの輸入軽油を取り扱うため、共同代表者Aを入れるが、すべてをAに任せたがために実態把握が出来ず、軽油引取税未納から脱税の事態を招く。実印も持ち出されているため条件変更も出来ず、期限の利益喪失。
 (事例②)業績低迷中にもかかわらず、代表者は海外旅行や高級外車を購入するなど一貫して派手な生活を続け、資金繰りに対しても計画性がなく、ノンバンクからの高利な借入れを行い資金繰りが悪化して破産、破産後は代表者は行方不明。
 ―業績低迷にもかかわらず経営を他者に任せる、あるいは、派手な生活ぶりが改まらず経営者の自己責任ともいえる倒産事例。経営者の経営哲学に負うところが大であるが、経営者は事業の実態を正確に把握し、経費支出の抑制を必要があった。
   ◆   ◆
 「過剰設備」は26件(2億1,200万円)の事故がある。
 (事例①)2店目を開業するに当たり、経営計画なく出店し安易に市中の高利貸しから資金調達を行うなど資金計画もずさん。やがて資金繰りに行き詰まり計画資金の借入れ返済が重く返済遅滞となり、期限の利益喪失。
 (事例②)SS全面改装して設備を一新、改装費を全額借入金で実施したが業績改善が見られず収益償還不能の事態を招く。設備投資による借入金の負担大きく、やがて資金繰りが悪化し、期限の利益喪失。
 ―長期的視点に立たない新規のSS出店や全面改装などの設備投資を過度な借入れにより資金調達を行った結果、収益償還不能となり倒産に至った事例。長期経営計画の収益力算定から収益向上などの希望的な観測を排し、経営者自らが資金計画の作成を行う事が必要。

※【期限の利益喪失】=債務者に返済延滞や破産手続き開始、取引停止処分等の事由が発生した場合、債権者から償還期限を待たずに一括返済を求められること

〈3〉早めの「後継者育成」重要 ~SS経営判断に起因しない事例~
 SS経営判断が要因ではない「連鎖倒産・不良債権」、「病気・死亡」の2類型の事故は、計115件(11億7,700万円)。
   ◆   ◆
 「連鎖倒産・不良債権」は32件(2億9,000万円)の事故がある。
 (事例①)自動車のディーラーを古くから経営していたが、リコール問題や景気低迷などにより業績不振となり倒産、代表者が経営意欲をなくし、SS業についても連鎖して倒産、自己破産となる。
 (事例②)古くから工務店を経営していたが、過去から工事売掛金が不良債権化し、次第に資金繰り化により経営が行き詰まり、経営意欲をなくしてSS業と合わせて自己破産。
 ―SS事業ではない本業の行き詰まりを要因とする資金繰り破綻が倒産の引き金となった事例。SS事業自体は問題なく経営できており、事業の分離が出来れば経営継続は可能であった。健全経営のSS事業であれば分社し、売却による事業譲渡なども視野に入れて健闘すべきであった。
   ◆   ◆
 「病気・死亡」は29件(3億800万円)の事故がある。
 (事例①)業況悪く、条件変更により返済額の減額を実施するも1年後に病死。息子がいたが、薄利な業界事情により継承する事業意欲はなく、相続放棄により会社破産。
 (事例②)経営環境の悪化により資金繰りが疲弊してきたことから、毎月の返済額を減額対応した矢先に、代表者が事故で死亡。同社役員であり経理事務担当の長女が経営するも、業務や資金繰りに把握が出来ず、不渡りにより期限の利益を喪失。
 ―経営者の病気などを原因に倒産に至った事例。後継者への事前の事業継承努力など、経営者不在でも事業の継続が可能となるようにしていなかったのが倒産に至った背景。石油販売業にとって、後継者の育成は事業承継を行う際の最重要課題となっている。
   ◆   ◆
 最後に、〈2〉の項で掲載した「SS経営判断」が原因で、事故につながった3つの典型ケースと対処法を再度、振り返ってみる。
 《兼業失敗》安易な事業展開が本業を圧迫した事例が多い。新たな事業展開は、経営者が先頭に立って軌道に乗せるべきで、他者への依存した経営やデベロッパーの言いなりとなった不動産事業は成功率が低い。
 《放漫経営》業績低迷にもかかわらず経営を他者に任せる、あるいは派手な生活ぶりが改まらず、経営者の自己責任ともいえる倒産事例。経営者の経営哲学に負うところが大であるが、経営者は事業の実態を正確に把握し、経費支出の抑制を必要があった。
 《過剰設備》長期的視点に立たない新規のSS出店や全面改装などの設備投資を過度な借入れにより資金調達を行った結果、収益償還不能となり倒産に至った事例。長期経営計画の収益力算定から収益向上などの希望的な観測を排し、経営者自らが資金計画の作成を行う事が必要。